認知症の親との接し方・NG対応集|「何度も同じことを聞く」「財布を盗まれた」への正しい声かけ
この記事のポイント(30秒で把握)
- 認知症の親に「正論で反論・訂正する」のは絶対にNG(本人の不安と興奮を増幅させるだけ)
- 対応の基本公式は「受容(一旦受け止める)」+「共感」+「話題のすり替え(気をそらす)」
- イライラしたときは「病気が言わせている」と割り切り、一時的に別室へ移動して物理的な距離を取る
1. なぜ家族は疲弊し、思わず怒鳴ってしまうのか?
「さっき言ったばかりでしょ!」「盗むわけないじゃない!」――。
認知症を患った親の理不尽な言動に、つい声を荒らげてしまい、後から強い自己嫌悪と罪悪感に苛まれる家族は非常に多くいます。
認知症になると、「直前の記憶(エピソード記憶)」は消えてしまいますが、「不安・恐怖・悲しみといった感情の記憶」は強く心に残ります。
家族がどれだけ論理的に正論を並べても、親にとっては「責められた」「怒られた」「馬鹿にされた」という嫌な感情だけが蓄積し、かえって頑なになったり興奮したりする悪循環に陥るのです。
2. やってはいけない!認知症対応の「3大NG態度」
| NGな態度 | なぜダメなのか?(親の心理) |
|---|---|
| ① 正面から否定・訂正する | 「食べたでしょ」「ここに置いてあるでしょ」と事実を突きつけても、親の世界では本当に「食べていない」「盗まれた」のです。否定されると親は「嘘つき扱いされた」と深く傷つきます。 |
| ② 子ども扱い・バカにする | 「はいはい、また始まった」「もう何もしなくていいから」とあしらう態度は、親としてのプライドを粉々に傷つけ、うつ状態や暴言・暴力(BPSD)を悪化させます。 |
| ③ 記憶力のテストをする | 「今日が何曜日かわかる?」「私の名前は誰?」と試すような質問は、答えられない自分を痛感させ、強烈な屈辱感と恐怖を与えます。 |
3. シチュエーション別!今すぐ使える「OK・NG声かけ比較表」
| よくある場面 | NGな声かけ(逆効果) | OKな声かけ(推奨) |
|---|---|---|
| 何度も同じ質問をする (「今日病院だっけ?」等) |
「さっきも言ったでしょ!何回聞けば気が済むの!」 | 「心配なんだよね。明日の10時だよ。忘れないようにここに大きく書いておこうね」(不安を受容し、可視化する) |
| 物取られ妄想 (「財布・通帳を盗まれた!」) |
「盗むわけないでしょ!言いがかりはやめて!」 | 「えっ、それは大変!困ったね、一緒に探そう」 ※見つけたら本人の手で取らせ、「ここにあって良かったね!」と安心させる |
| 食事直後の催促 (「ご飯はまだ?」) |
「さっき食べたばかりでしょ!お皿片付けたの見えない?」 | 「今準備しているから、温かいお茶とおせんべいを食べて待っててね」(軽食やお茶で満腹中枢と気をそらす) |
| 帰宅願望(夕暮れ症候群) (自宅なのに「家に帰る」) |
「ここがあなたの家でしょ!どこへ帰る気なの!」 | 「外はもう暗いから危ないよ。夕飯を食べてから車で送るね」(否定せず先延ばしにし、別の作業を頼む) |
4. 家族のメンタルを守るための「心の防衛術」
- 「病気が言わせている」と割り切る:
暴言や理不尽な疑いは、親本来の性格ではなく「脳の病変が引き起こしている症状」です。親本人と病気とを頭の中で切り離して捉えましょう。 - 限界を感じたら「その場から物理的に逃げる」:
カッとなったら言い返さず、「ちょっとお手洗いに行ってくるね」と別室へ移動し、深呼吸して温かいお茶を飲みましょう。5分離れるだけで冷静さを取り戻せます。 - デイサービス・ショートステイで「離れる時間」を作る:
24時間顔を突き合わせていれば、どんな聖人でもイライラします。外部サービスを積極的に利用して、家族が介護から完全に解放される時間を週に数日必ず確保してください。
まとめ:正しさの追求より「安心感」を最優先に
介護におけるコミュニケーションのゴールは、「事実を正しく理解させること」ではありません。親が「自分は受け入れられている、ここは安全な場所だ」と安心することです。
完璧に対応できなくても当たり前です。10回中1〜2回でも「そうなんだね」と頷けたら、自分を大いに褒めてあげてください。

