「後見制度支援信託」とは?成年後見人の使い込みを防ぎ高額報酬を抑える家庭裁判所の仕組み
この記事のポイント(30秒で把握)
- 成年後見制度の最大のデメリットである「専門職への月額2万〜6万円の報酬が一生涯続く負担」を大幅に削減できる
- 預貯金の大半を信託銀行に預け、日常の生活費のみを家族が管理することで初期段階で専門職後見人を辞任・終了させることが可能
- 信託財産の引き出しには家庭裁判所の指示書が必須なため、親族間の使い込み疑惑やトラブルを完全に防ぐセーフティネットになる
1. 成年後見制度を躊躇させる「一生続く高額報酬」の壁
親が認知症になり銀行口座が凍結されてしまうと、親自身の預貯金から介護費用や施設代を引き出すことができなくなります。
その解決策として公的に用意されているのが「成年後見制度」ですが、多くの家族が申立てをためらいます。その最大の理由が「弁護士や司法書士など専門職後見人への報酬負担」です。
- 家族が後見人に選ばれない現実:現在、親族が後見人に選任される割合は約2割に過ぎず、約8割は家庭裁判所が指定した弁護士や司法書士などの第三者が選ばれます。
- 月額2万〜6万円の報酬が死ぬまで続く:親の管理財産額に応じて月額2万〜6万円の基本報酬が決定され、親が亡くなるまで毎月親の口座から差し引かれます(10年続けば240万〜700万円超の負担)。
- 一度始めたら途中で辞められない:「費用がかかるから後見人を解任したい」と思っても、正当な事由がない限り家庭裁判所は辞任を認めません。
この「専門職への報酬が重すぎる」という痛烈な批判を受けて、最高裁判所と金融機関が開発した画期的な仕組みが「後見制度支援信託」です。
2. 「後見制度支援信託」の仕組みと3大メリット
後見制度支援信託とは、本人の預貯金のうち、「日常的な支払いに使わないまとまった金銭」を信託銀行等に信託し、日常の支払いに必要な金銭のみを手元の普通預金で管理する仕組みです。
| 区分 | 預け先・管理方法 | 利用目的 |
|---|---|---|
| ① 日常生活費 | 一般の銀行(普通預金口座) ※家族後見人が通帳・キャッシュカードを管理 |
毎月の生活費、介護サービス費、医療費の支払い(半年〜1年分程度の手元資金) |
| ② 基本財産(信託) | 信託銀行(後見制度支援信託口座) ※家庭裁判所の指示書がないと出金不可 |
将来の施設入居費、長期的な資産保全(普通預金口座へ毎月定額を自動交付) |
利用する3大メリット
- 専門職後見人の報酬を最小限に抑えられる
信託設定が完了した時点で、財産管理のリスクがほぼゼロになるため、当初選任された弁護士・司法書士が辞任し、家族(子ども)が単独で後見人に就任できるケースが非常に多くなります。これにより、毎月の専門職報酬の支払いがストップします。 - 家族による「使い込み疑惑」を完全防止できる
信託口座のお金は家庭裁判所の発行する「指示書」がなければ1円も下ろせません。そのため、兄弟や親族から「親のお金を勝手に着服しているのではないか」と疑われるリスクを完全に排除できます。 - 元本保証&ペイオフの保護対象
後見制度支援信託は「合同運用指定金銭信託」として信託法および預金保険法で保護されており、元本保証かつ預金保険機構の保護対象となるため、金融機関破綻時も安心です。
3. 利用できる条件と対象となる財産
後見制度支援信託は、すべての人が利用するわけではありません。一般的に以下の基準で家庭裁判所から利用を打診されます。
利用基準の目安:
・流動資産の総額:本人の普通預金・定期預金の合計が「おおむね500万円〜1,000万円以上」ある場合。
・信託できる財産:「金銭(預貯金)」のみ。不動産、株式・投資信託、貴金属などは直接信託できません(不動産売却代金や株式換金後の金銭であれば信託可能)。
・流動資産の総額:本人の普通預金・定期預金の合計が「おおむね500万円〜1,000万円以上」ある場合。
・信託できる財産:「金銭(預貯金)」のみ。不動産、株式・投資信託、貴金属などは直接信託できません(不動産売却代金や株式換金後の金銭であれば信託可能)。
4. 手続きの流れと家裁・信託銀行の連携タイムライン
- 家庭裁判所に後見開始の申立てを行う
申立て書類の希望欄で「親族を後見人候補者とし、後見制度支援信託の利用を希望する」旨を記載します。 - 家庭裁判所が専門職後見人を選任する
信託契約の締結手続きを行うため、一時的に弁護士や司法書士が後見人に選任されます(親族が「後見人候補者」または「後見監督人」等で併任される場合もあります)。 - 専門職後見人が財産を調査・報告する
専門職後見人が親の金融機関口座を調査して財産目録を作成し、毎月の年金収入と生活費・介護費を試算した上で、家裁に「いくらを信託し、いくらを手元に残すか」の計画書を提出します。 - 家庭裁判所が「指示書」を発行し、信託契約を締結する
家裁の指示書に基づき、専門職後見人が信託銀行と信託契約を結び、まとまった預貯金を信託口座へ送金します。 - 専門職後見人が辞任し、家族が後見人を引き継ぐ
信託設定が完了すると専門職後見人は任務を終了して辞任し、家庭裁判所から改めて家族が成年後見人に選任されます。以後は家族が毎月の普通預金口座の入出金管理を担います。
5. まとまった臨時出費(施設一時金・リフォーム)が必要になったら?
「信託口座にお金を預けてしまったら、親が老人ホームに入るときの一時金や、自宅のリフォーム代が払えなくなるのでは?」という心配も無用です。
まとまった支出が必要になったときは、家庭裁判所に「一時金交付の申立て」を行うことで、信託財産から払い戻しを受けることができます。
- 提出書類:老人ホームの契約書・入居一時金請求書、または住宅改修の見積書
- 交付までの期間:家裁に申請してから通常1〜2週間程度で指示書が発行され、信託銀行から手元の普通預金口座へ必要金額が振り込まれます。
まとめ:後見制度を使うなら「支援信託の併用」を必ず希望しよう
「成年後見制度=専門職に何百万円も取られる危険な制度」と敬遠されがちですが、「後見制度支援信託」を正しく活用すれば、専門職の関与を初期の数ヶ月のみに限定し、費用負担を劇的に抑えることが可能です。
口座凍結で親の資産が動かせず困っている一人っ子や就労世帯の方は、家庭裁判所での相談や申立て時に「後見制度支援信託(または支援預金)の利用を希望します」と積極的に伝えてみましょう。

